近年、気候変動の影響でゲリラ豪雨や大型台風が頻繁に発生し、これまで水害とは無縁だった地域でも浸水被害が相次いでいます。オフィスビルも例外ではなく、ひとたび浸水してしまうと、大切な会社の資産や業務データ、そして従業員の安全が脅かされます。事業の継続性を守り、リスクを最小限に抑えるためには、事前の備えと迅速な対応が不可欠です。
この記事では、オフィスを水害から守るための総合的な対策について、水害発生前の備え、発生時の対応、そして復旧時の対応という3つのフェーズに分けて、具体的な行動計画をご紹介します。
フェーズ1:水害発生前の「備え」
水害の被害を決定づけるのは、実は「いつ、どこで、何が起こるか」を予測し、どれだけ準備できているかです。
1. リスクの特定と情報収集
まず、自社のオフィスがどれくらい水害のリスクを抱えているかを正確に把握することが重要です。
- ハザードマップの確認: 国土交通省や各自治体が公開しているハザードマップで、オフィスの所在地が洪水、内水氾濫、高潮などのリスクエリアに該当するかを確認しましょう。浸水深の予測も把握しておきます。
- 過去の災害情報の調査: オフィスの近隣で過去に浸水被害がなかったか、地域の歴史を調べておくことも有効です。
- 情報収集体制の構築: 災害発生時には、テレビやラジオ、インターネットのニュースだけでなく、自治体からの避難情報や気象庁の気象警報などをリアルタイムで入手できる体制を整えます。複数名で情報を確認し合うルールを決めておくと、見落としを防げます。
2. オフィスの物理的な対策
建物の構造やオフィスのレイアウトに合わせて、具体的な対策を講じます。
- 重要機器・書類の高所への移動: サーバー、PC、プリンターなどの高価な電子機器は、可能な限り2階以上のフロアや、床から1m以上の高さにある場所に移動させましょう。契約書や重要書類も同様です。
- 防水・止水対策: 玄関やシャッター、地下室への入り口など、水の侵入が想定される箇所には、土嚢や止水板を常備し、すぐに設置できるようにしておきます。
- 電気系統の保護: 分電盤やコンセントは、浸水すると感電の危険があるため、特に注意が必要です。水の侵入が予測される場合は、事前にブレーカーを落とす準備をしておきましょう。
3. BCP(事業継続計画)の策定
オフィスが機能不全に陥った場合でも、事業を停止させないための計画を立てておきます。
- 安否確認・連絡網の整備: 災害時に全従業員の安否を迅速に確認できるよう、連絡手段(緊急連絡用メーリングリスト、ビジネスチャット、SNSなど)を複数用意しておきます。
- 業務の代替手段の確保: オフィスが使えなくなった場合の業務継続方法を定めます。リモートワークへの切り替えや、サテライトオフィスの利用、クラウドサービスの活用などが挙げられます。
- データのバックアップ: 業務データは定期的にクラウドや外部ストレージにバックアップを取り、物理的な損傷からデータを守る体制を確立します。
フェーズ2:水害発生時の「対応」
水害発生時には、あらかじめ決めておいた計画に基づき、冷静かつ迅速に行動することが求められます。
1. 従業員の安全確保と避難
何よりも最優先すべきは、従業員の安全です。
- 危険が迫る前の早期避難: 気象警報や避難指示が発令された場合は、ためらわずに避難を開始します。
- 避難場所の確認: 避難経路や避難場所は、事前に従業員に周知しておきましょう。
2. オフィスの保護
水の侵入が迫っている場合、被害を最小限に抑えるための行動をとります。
- 電気の遮断: 浸水が予想される場合は、感電を防ぐため、速やかにビルのメインブレーカーを落とします。
- 止水対策の実行: 玄関や地下室の入り口に土嚢や止水板を設置し、水の侵入を防ぎます。
- 重要物品の高所移動: 最終段階として、手の届く範囲にある重要物品をできるだけ高い場所に移動させます。
フェーズ3:水害後の「復旧」
水が引いた後も、復旧作業には細心の注意が必要です。
1. 安全確認と被害調査
オフィスに戻る前に、必ず安全確認を行います。
- 専門家による点検: 建物や設備に損傷がないか、電気系統に異常がないかを専門の業者に点検してもらいます。
- 写真撮影と記録: 被害状況を写真や動画で記録し、保険会社への報告や今後の対策に役立てます。
2. 業務再開に向けた対応
一刻も早い業務再開を目指します。
- 清掃と消毒: 浸水した場所は徹底的に清掃し、カビや感染症の発生を防ぐために消毒を行います。
- 保険金の請求: 災害保険に加入している場合は、速やかに保険会社に連絡し、被害状況を報告します。
まとめ
オフィスの水害対策は、一度行えば終わりではありません。日々の情報収集と、定期的な計画の見直しが不可欠です。BCPを策定し、従業員と共有することで、いざという時にも全員が同じ方向を向いて行動でき、会社の事業と従業員の安全を守ることにつながります。
あなたのオフィスでは、どのような水害対策をしていますか?ぜひ、この機会に話し合ってみてください。